この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
ある中小企業が、元従業員から未払残業代として約800万円を請求されました。この企業が手がける業務は、運輸業務であったため、運転・運送以外の待機時間が発生し、どこからどこまでが業務の範囲内か、見解が分かれる性質のものでした。元従業員(労働者側)は、待機時間を含めたすべての拘束時間を業務の範囲に含め、最大額を請求しました。
解決への流れ
会社から相談を受けて、労働審判において決着することとなりました。労働審判では、会社側が保管する業務報告書(日報)、社用車に搭載された運転時間の記録等の資料を提出し、元従業員が実際に稼働していた時間はさほど多くなく、休憩時間が含まれていることを証明をすることができました。その結果、元従業員から請求された金額の4分の1に減額して和解が成立することとなりました。
話し合いで決着しない場合、裁判所の労働審判という手続を使うことがあります。労働審判は、他の一般的な訴訟よりも期間が短く、かつ、原則として3回の審判期日ですべての主張と証拠を出し切る必要があるため、その対応方針を誤ると、多大な未払給与・残業代を支払うことにならざるを得ません。会社が保管する膨大な資料を、裁判所が納得する形で、短期間のうちに整える作業は、専門家である弁護士に任せてしまうほうがよいでしょう(社内で処理しようとすると、通常業務をかなり圧迫してしまいます)。また、日ごろの労務管理や、社内の就業規則の作成・修正などがしっかり行えていないと、その穴を狙って残業代などを請求されるリスクが増します。日ごろから、労働問題に精通した弁護士に社内体制を見てもらうことが、問題発生を事前に防止することにつながります。