この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
知り合いから詐欺の被害に遭わされながら,警察からはその共犯者ではないかとも疑われており、また,その詐欺の知り合いであることから他の被害者からは共犯者だから返済せよと脅されているご夫婦がおられました。そのため,遠方から当地まで逃げてこられて,私に破産手続きの依頼をご相談されました。長崎地裁では,現在,破産する方が少しでも債権者に返済できる債権を持っていると思われるような場合には,その回収を図るため管財人を付けがちです。本件のような,詐欺の被害にあった場合には,形式的に考えれば,破産を考えているご夫婦は,その詐欺をした相手方に対し,返済ないし損害賠償を請求できるわけですから,原則として管財人を付け,債権の回収を図る必要性があるのです。
解決への流れ
本件も,例外なく,裁判所から管財人を付けるとの意見がなされました。そうすると,別途,管財費用を最低でも20万円用意しなければなりません。用意できなければ破産できないのです。しかし,遠方から来られて,未だ定職についていないご夫婦に,20万円といった管財費用を捻出させることは困難でしたし,また,私に於いても管財人を付ける必要性はないと判断しました。そこで,私は裁判所に対し,私が管財人がやるべき調査をやるので,管財人を付けないで欲しい旨上申し,裁判所を説得しました。そして,詐欺が行われた現場の警察署に対し,その事件の概要・被害者の有無を問い合わせて教えてもらい,詐欺をした相手方の居所等を調査し所在不明であることを確認した上で,これらの資料を付けて,管財人を付けても相手方からの債権回収は困難または不可能である旨報告したことで,裁判所から,管財人を付けないことを取り付けたのでした。
借金は,ご自身の返済能力に見合った額で止めておくのが何よりです。それを超えて借金すると,返済できなくなり,破産せざるを得ません。破産すること自体は,破産制度が国が認めている制度なのですから,何らやましいものではありません。ただ,破産すると,借金が消えると同時に,財産も信用も失ってしまいます。財産は取り戻すことは容易ですが,信用を取り戻すことは困難です。従って,「見合った借金」に心掛けることが肝要でしょう。また,破産するとしても,現在,多少問題があれば,裁判所は管財人を付ける傾向にあります。そうすると,管財費用として20万円~50万円を用意する必要が生じます。管財費用を用意できないと破産できないのです。お金がなくて破産する方に,お金を用意出来ないと破産させませんというのは矛盾していると思うのですが,現実の運用はそうなっているのです。そこで,私は,管財人までは不必要であろうと思われる事案については,管財人を付けないよう裁判所に働きかける努力もしています。そして,今日まで,まだ10件には届いていませんが,管財人を付けることを裁判所に思い止まって戴いた事例もあります。このように,私は,とにかく依頼者の利益を第一に考えて事件を処理致しておりますので,安心してご依頼下さい。