この事例の依頼主
60代 女性
相談前の状況
被相続人が旦那様、相続人が奥様とお子様3人(長男、長女、二女)という相続関係でした。奥様が依頼者様でした。お子様3人については、相続は全て母である依頼者様に委ねたいとのお考えから、ご自分で相続放棄をしておられました。被相続人の遺産は、資産として、マンションが3室のほかに、現金、預金、株式、入院給付金、自動車などがありました。一方、負債として、信販会社を含む数社からの借入れがありました。現在分かっているだけでも相当額の負債があり、これだけであれば資産(+)が負債(-)を上回ると思われるけれども、追加の負債が出てくる可能性もあり、その金額によっては負債(-)が資産(+)を上回るという状況でした。依頼者様は、どのように対応すべきか決めかねて、当職にご相談されました。
解決への流れ
当職において、限定承認の手続を取ることが妥当であると判断して、家庭裁判所に限定承認の申立をいたしました。そして、家庭裁判所に鑑定人選任の申立を行い、マンションの鑑定人として不動産鑑定士を、自動車の鑑定人として財団法人日本自動車査定協会の査定長の選任をしてもらい、両名に、それぞれマンションと自動車の鑑定をしていただき、資産の評価額を確定いたしました。一方、現在分かっている借入先に対して負債調査を行うとともに、負債を有している可能性がある会社等に対して負債調査を行い、負債額を確定いたしました。また、マンションが競売にかけられようとしていましたので、その債権者と交渉して、競売を取下げてもらう合意を取り付けました。最終的に、資産(+)が負債(-)を上回っていることが判明し、各債権者に対する負債の弁済を行い、マンションも全て確保することができました。
相続の処理について、「単純承認をすると、多額の負債を抱えてしまうことになるかもしれないので怖い。一方で、相続放棄をすると、せっかくの遺産を無駄に捨ててしまうことになるかもしれないので惜しい。」という葛藤がある場合があると思います。このような場合、限定承認という方法があります。しかし、限定承認の手続は、相続放棄などに比べてかなり複雑です。法的知識と経験がそれほどない方がご自身でされるのは容易ではないと思われます。さらに、遺産に不動産や自動車が含まれている場合は、鑑定を行うことになりますが、限定承認手続において不動産や自動車などの鑑定を行うということまで実際に行ったことがある弁護士はそれほど多くないようです。特に今回は、マンションが競売にかけられようとしており、そのままでは依頼者様がこれを失うことになってしまうという状況でしたが、失わずに済ませることができました。依頼者様からは、「相続放棄をしようかと思っていましたが、お陰様でマンションも残すことができました。限定承認という方法を勧めていただき、手続をしている途中も安心できましたし、最終的にとてもいい結果となりました。ありがとうございました。」と感謝のお言葉をいただきました。