犯罪・刑事事件の解決事例
#人身事故 . #慰謝料・損害賠償

80代男性の家事労働についての逸失利益について、一審は否定されるものの、控訴審で認められ、和解により解決

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島 弘毅 弁護士が解決
所属事務所島法律事務所
所在地東京都 町田市

この事例の依頼主

80代以上 男性

相談前の状況

地方在住のBさんは80代ですが、事故直前まで元気で、70代後半の妻と2人暮らしでした。しかし、妻は認知症を患っており、かつ、妻が介護ヘルパーを嫌うため、Bさんが妻の通院に付き添うばかりか、食事の世話、一緒に入浴するなど介護全般の世話をしていました。ところが、Bさんは自転車に乗って横断歩道を渡っていたところ、自動車と衝突し、重い後遺障害を負ってしまいました。都内に転院して娘さんが成年後見人として、Bさんの損害を請求したいと考え、弁護士のもとを訪ねました。

解決への流れ

高齢者の交通事故においては、過失割合と損害額を詳細に検討し、訴訟するか示談解決するかの方針をたてる必要があります。特に損害については、高齢者は無職者が多く、損害額の大きな割合を占める逸失利益(もし事故にあわなければ稼ぐことが出来たであろう利益)がない場合があるからです。Bさんは認知症の妻の世話をしていたという事情もありましたので、家事労働として逸失利益が認められるべきではないかと考え、妻の介護記録などを取り寄せ、提訴しました。しかし、一審では特段の理由も付されず、逸失利益は否定されました。そこで、控訴審においては過去10年の高齢者の家事労働を認めた判決を逐一検討し、控訴理由書で詳細に主張したところ、控訴審裁判官は弁護士も納得しうる基礎収入をもとに和解案を作成してくれ、相手方も納得したことから、無事和解が成立することが出来ました。

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島 弘毅 弁護士からのコメント

家事労働の逸失利益(もし事故にあわなければ稼ぐことが出来たであろう利益)について、50代の女性であれば、賃金センサス女子平均賃金として概ね年収350万円を基礎収入として計算されます。ところが、高齢者になればなるほど育児も終了することから家事労働について同金額を下回る評価になり、高齢者になれば相当に低い金額での基礎収入しか認められません。しかし、「老老介護」と呼ばれ、育児以上に困難な家事を勤める事実があります。本件ではなんとか裁判官に、高齢者の「専業主夫」事案として、「老老介護」における家事労働の基礎収入を認めてもらいたいと奮闘した結果、控訴審裁判官の理解を得られた事案でした。