この事例の依頼主
20代 男性
Bさんは大学時代に友人に誘われて競馬を始め、その後、その面白さに競馬にのめりこんでしまい、給与だけでなく、借金をしてまでも馬券を購入するようになりました。借金は増えていきますが、「万馬券で返済できる」と思い、さらに競馬にのめり込んでしまい新たなカード会社からも借入をして続けてしまいました。ところが、既に借入もできなくなり、返済も滞ってからしばらくして、裁判所から呼出状が来てしまいました。Bさんは「えらいことになった」と弁護士に相談することにしました。
Bさんの借入は生活費目的というよりも競馬というギャンブルのために抱えてしまったものです。その額も到底、Bさんの給与から支払をすることはできません。そのため、弁護士は、破産手続を選択することをしましたが、ギャンブルによる借入は「免責不許可事由」にあたり、簡易な手続ではなく、破産管財手続による解決を求めるしかありません。破産管財手続は、裁判所から選任された弁護士である破産管財人がBさんについて「免責」してもよいか調査する手続です。そのためにはBさんが最低限20万円を用意する必要があります。弁護士は、Bさんに「いつから、どの程度の割合で馬券を買い、どの程度の金額を費消したか」詳細に聞き取り、Bさんに今後2度とギャンブルをしないという誓約書と反省文を書かせました。そのうえで、裁判所に破産手続の申立を行いました。弁護士はBさんと一緒に破産管財人と面談をしました。破産管財人からは「十分な反省をしたようなので、今回に限って免責を認めるよう裁判所と協議しますが、今後はくれぐれも注意して生活するように」と厳しく注意されました。その後、裁判官からも同様の注意がBさんにされ、Bさんは固くギャンブルをしないことを誓約しました。そして、「裁量により免責を許可する」決定をもらい、破産手続は終了しました。
破産手続は、現在抱えている借金の支払義務を免除してもらう=免責決定を得るために行うものです。しかし、Bさんのようにギャンブルで借金を抱えてしまった、投資で失敗し借金を抱えてしまった、キャバクラなど飲食費に費消したなどの行為は、免責不許可事由にあたります。とはいえ、これからの長い人生を送っていくに際し、免責されないと生活にも大きな支障が生じてしまいます。そのため破産手続においては、裁量により免責を許可する事情があれば免責許可を与えることにしています。その事情を調査する役割が破産管財人であり、そのためには最低限20万円を用意する必要があります。もちろん、20万円を用意しただけで免責が許可されるわけではなく、免責不許可事由を詳細に申告し、その行為について深く反省し、二度と同じ失敗は繰り返さないという固い決意を示す必要があります。免責不許可事由があるにもかかわらず、黙ったまま申立をしても後に発覚することもありますので、弁護士には正直に話をしてもらう必要があります。