この事例の依頼主
80代以上 男性
相談前の状況
ご夫婦は同居する長男から数十年の長きにわたり虐待を受けていましたが、ある時、ついに他の親族の支援を受けて自宅を脱出し、高齢者施設で穏やかに暮し始めました。しかし、施設の費用が2人分かかるため毎月赤字が続いており、預貯金が底をつくことが心配されていました。そんな中、不動産会社に自宅の売却を相談しましたが、長男が家に住み続けていることが障害になるため売却が難しいということになり、私のもとに相談に来られました。
解決への流れ
ご夫婦からお話を伺った結果、長男との交渉はきわめて難しいと思われましたので、即座に裁判手続で解決することにしました。長男に対し、建物の明渡しを求める訴訟です。ご夫婦からよく事情をお聞きし、虐待に関する資料をできる限り集めた上で訴訟を提起し、無事に明渡判決を得ることができました。その後、長男は、判決が確定しても家から出ていくことを拒んだため、やむなく強制執行を行い、明渡を実現しました。その後、家は無事に売却することができ、ご夫婦には、施設の費用と生活費を確保していただくことができました。
余談になりますが、明渡が完了した後日、長男と私とで直接会って会話をする機会がありました。そのとき私が驚いたのは、彼は、両親を虐待してきたにもかかわらず、自分は両親を愛しているのだと静かに語ったことでした。長い家族関係や彼の人生の中でどのような歴史があったのか、ほんのいっとき関わっただけの私などがすべてを知ることはできませんが、最後に彼に対し「あなたも頑張って暮らしてください」と言葉をかけて別れたことが記憶に残っています。所有する土地家屋に関し、ご自身ではどうにもならない問題でも、弁護士があらゆる手段を考えることで解決に向かう場合があります。ぜひご相談を検討ください。