この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
子の親権者を母として離婚した元夫の方から、面会交流についての相談がありました。離婚後もしばらくの間は、父子の面会が問題なく行われていましたが、元妻が再婚したことをきっかけに、なし崩し的に面会が行われなくなっていきました。久しぶりに子と面会できたときには、子は父に対してよそよそしい態度を取るように変化しており、子の話では、家では父親に対する否定的な発言がなされているようでした。元夫婦間には、相互に不信があり、相互の連絡にも強い緊迫関係があって、やりとりを取ることが難しいということで相談に来られました。
解決への流れ
まず相談者から、よく話を伺い、できるだけ実際の状況を把握することに努めたうえ、弁護士である私から、元妻に対して、「はじめまして」とメールするところから始めました。丁寧なやりとりを心がけながら、最初は、元妻とのやりとりは私が行いながら、少しずつ実際の面会を再会し、続けていき、都度都度現れてくる課題を解決していきました。流れができてきて、相互の信頼関係ができてきたところで、元夫婦で直接やりとりする態勢に移行し、私はオブザーバー的立場に退きました。このような態勢で面会を続ける中で、当事者のみでのやりとりが、より円滑に、より柔軟になっていきました。最後は、父子が直接ラインでつながることも快く応じてもらうことができ、元夫婦と子の全体の関係が柔和な方向に移っていきました。
面会に関する話し合いの手続としては、調停にするという選択もありましたが、あえて裁判所を使わず、まずは、やはり話し合いで進める方向をとりました。直ちに要求をぶつけるということではなく、相手方の立場、状況の把握をしながら、「無理のない面会実現」という方向を示していきました。そして、やりとりの中でも、相手方の立場や考えを尊重するという姿勢を持つことで、相手方との信頼関係が醸成されていきました。実際の面会に際しても、相談者ご本人が、相手方や子に対する配慮を行っていく中で、元夫婦の間の信頼関係も再構築されることとなり、最後は、自分達だけでやりとりできるところまで、関係性を回復させることができました。「不信」から「信頼」に関係性が変化していった背景には、依頼者はもちろん、相手方からの話も傾聴する態度を心がけ、相手の立場を理解しようとする姿勢を持ったことが大きく作用したものと思います。