この事例の依頼主
女性
ご依頼者は別居中のご主人と性格の不一致を理由に離婚を望んでおり、ご自身で離婚に向けた話し合いをしておられました。ところが、お互いの言い分を主張し合うばかりで話し合いが平行線となり、夫が声を荒げるなどしたため、これ以上、話し合いを続けるのが怖くなってしまったとのことで、ご相談に来られました。ご依頼者は、調停や裁判はできるだけ回避し、速やかに離婚したいとのことでした。また、お子様の親権をどうしても取得されたい、というご希望もありました。そこで、相手方であるご主人に対し、代理人としてご依頼者の意向を伝え、早期の協議離婚を目指し、交渉をすることになりました。
代理人就任後、速やかに、ご主人に対し、今後は当職が窓口になるのでご依頼者本人への連絡は控えて戴くよう通知しました。これにより、ご依頼者は、ご主人からの連絡に怯えることなく生活ができるようになりました。その後、まずは、ご依頼者が離婚を望む理由を代理人の立場から書面で丁寧に説明するところから始めました。書面をご主人に送付後は、電話でご依頼者の意向を伝えるようにしました。その方が、ご主人と冷静に話ができると考えたためです。電話でご主人と話をする際は、ご依頼者の意向を一方的に伝えるだけでなく、ご主人の話にも耳を傾け、双方の言い分のうち、食い違っている点がないか丁寧に確認しながら進めました。ご主人には、復縁の可能性がない前提で、今後の見通しを交えながら粘り強く説得を重ねました。当初、ご主人はご依頼者が離婚を決意した理由について納得できない様子で、お子様の親権についても譲りたくない意向でおられましたが、徐々に、復縁の可能性がないことを受け入れるようになり、定期的な面会交流に応じることを条件に、最終的には、こちら側の要望を受け入れました。以上の経緯で、離婚届と当職が作成した離婚協議書に併せて署名・押印をもらうことで、協議離婚を成立させることができました。ご依頼者は、弁護士に依頼することによって、ご自身で直接、ご主人と話し合いを行わずに済み、精神的な負担から解放されるとともに、代理人を介してご主人を説得することにより、お子様の親権を取得する形での協議離婚を成立させることができ、家庭裁判所での離婚調停・離婚裁判等の煩雑な手続きを回避することができました。
離婚の方法については、当事者の協議により離婚届を作成する協議離婚の方法と、協議がまとまらない場合に、裁判所の手続きを利用する調停離婚・裁判離婚の方法とがありますが、調停・裁判については、調停を経なければ裁判をできない仕組みになっており、手続きに長い時間がかかるのが一般的です。本件では、当初、ご主人が離婚に応じないおそれがありました。また、離婚に応じる場合でも、双方がお子様の親権を主張して親権争いに発展するおそれもありました。もし、ご主人が離婚に応じず調停や裁判に移行すれば手続きが長期化し、かつ、法律上の離婚原因がないため離婚が認められない可能性が高い事案でした。また、親権争いに発展した場合、審判での決着によらざるを得ないケースが多いのが実情であり、手続きが長期化するおそれがありました。ですが、夫婦双方ともまだ若く、双方の再出発という観点からは、協議により早期に離婚するメリットは大きく、また、お子様は女の子で幼く、母親の手助けが必要な状況でしたので、ご主人を説得することで、協議離婚を成立させる余地は十分にありました。そこで、すぐに調停を申し立てることはせず、まずは交渉を行うことにしました。離婚事案では、日常生活における事情の捉え方が夫婦双方で異なることも多く、一方的にこちらの言い分に基づいて主張するだけでは双方の認識のズレを埋めることができず、相手方に対する不信感がつのるばかりで、交渉が決裂することもあります。双方の言い分を第三者的視点から整理しつつも、なお、ご依頼者の立場に寄り添って、双方が納得できる妥協点を模索するのが重要だと認識しています。